【サスペリア リメイク版】オリジナルと真逆のアプローチは成功したか?

前回、少しだけ触れた映画『サスペリア』のルカ・グァダニーノ監督によるリメイク版について、サクッと感想を書かせていただきます。

名作『サスペリア』を再構築

まず、びっくりするほど話題になりませんでしたね。世界3大ホラー映画の一角に数えられる名作のリメイクなのに!不思議でなりませんでしたが、実際観に行ったら、なんとなくわかりました、話題にのぼらない理由が。

断っておきますが、映画がつまんないから話題にならないとか、そういうガッカリな話じゃないです。まぁ人それぞれ好みもありますが、少なくともとるに足らない駄作ってわけではないです。かといっておすすめかと問われると言葉を濁さざるを得ませんが・・・

ダンススクールにやってきたヒロインが、奇怪な出来事にまきこれて・・・って言う、ストーリーの大枠は、ダリオ・アルジェント監督のオリジナル『サスペリア』と同じなんですが、逆に言えばストーリー以外は、全部別物になってます。ここら辺が賛否の分かれるポイントでしょうか。

オリジナル版からそぎ落としたもの

オリジナル版の『サスペリア』が世界3大ホラーに数えられる理由は2つ。プログレバンド「ゴブリン」による音楽と“赤”を基調に色彩を効果的に使った映像美です。ストーリーで魅力を語られることは、ほぼないんじゃないでしょうか。

今回リメイクするにあたって、もともと弱かった(失礼)ストーリーを補強しようという意図があったとしたら、そこは成功しています。ただし代償も大きいですが。

オリジナル版を名作たらしめていた多くの要素は再構築の名目で切り捨てられています。具体的には、色彩豊かな映像が完全に消滅してます。ある意味1番のウリなのに、クライマックスをのぞけば、ほぼグレー一色の世界。もちろん意図的な演出ですが、あまりに大胆かと・・・

また、音楽はレディオヘッドのトム・ヨークが担当するということで、少しだけ話題を呼びました。オリジナル版の超名曲に対抗するには、これくらいのビッグネームじゃないと無理ってことなんでしょうね。

期待通り、トム・ヨークらしさ全開のすばらしい楽曲でした。ただゴブリンのように、20年以上頭の中に旋律が残り続けるようなインパクトは残念ながらありません。聴けば確かにいい曲なんですけどね。期待通りではあったけれど、期待以上ではなかったという印象です。

オリジナル版はバレエスクールと言う閉じた世界が舞台でした。対するリメイク版は当時のドイツ赤軍の動向、また外部の精神学者からの干渉もあります。明確に開かれた世界のはずなのに、不思議とオリジナル版以上に息苦しい閉塞感があります。

オリジナル版ではバレエだったダンスも、コンテンポラリーダンスに変わってます。乙女の花園感ゼロ。この差は極大。

コンテンポラリーとか言うとモダンなイメージですが、なんと言うかかなりアングラで、実際にはほぼ暗黒舞踏です。バレエと聞いてイメージする耽美さはカケラもなく、いい悪いは別として(個人的にはすごくいい)、ドスがきいた舞踏でびっくりしました。

映画を観る前に、ちょっとだけ読んだチラシのあらすじには、確かバレエスクールで事件が起きて~、どうのこうのって書いてあったはずなんですけど、180度違ってます。いい意味で期待を裏切られました。

ホラー映画としての評価は?

そして、話題にのぼらない最大の理由は、監督独自の解釈による演出にあると思います。オリジナル版が評価されたポイントを、ことごとく切り捨てるという、怖いもの知らずの大胆さには、拍手を贈りたい気持ちもありますが・・・

しかし単刀直入にいって、とんでもなくわかりづらいです。1回観ただけではとても理解できません。ネタバレになるので詳細は省きますが、「○○はいつから●●になってたんだ?」とか、重要っぽい伏線と無意味(?)なイメージの判断がつかなくて困惑します。暗喩なのかなんなのか、よくわからないエピソードやシーンが多すぎて、理解が追いつかない。

あと、日本人とヨーロッパの人とでは魔女に対する認識が違うのかなと感じました。多分、魔女ってヨーロッパでは本気で怖い存在なのかもしれないけど、日本に住んでると、どうしても魔法少女アニメの印象が強すぎて、魔女って存在に恐怖を感じないんですよね。

そんなお国柄の違いもあって、いわゆるホラー映画としての怖さはほとんど感じません。ただ、長期間にわたって、アレはいったいなんだったんだろうと、心を蝕み続ける遅効性の毒のような怖さはある映画だと思います。

サクッとのつもりが長くなってしまいましたが、好きとか嫌いとか抜きにして語りたくなる映画でした。

最後にひとつわがままを言わせてもらえるなら、再構築ではなくオリジナルのイメージのまま、今の技術で純粋にリメイクした『サスペリア』も観てみたいですね。

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しめ
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  • マーケティング事業部のしめです。仕事以外の時間はほぼすべて猫に費やしています。奴隷のような暮らしを強いられていますが、猫に奉仕する幸せかみ締めてます。ちなみに飼い猫の名前も『しめ』です。

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